SSブログ

パンには、なぜ臭素酸カリウムが必要か? [Food]


ネット上で「ヤマザキパンには臭素酸カリウムが入っている」などの情報を目にしました。

遠い記憶によれば、臭素酸カリウムは薬品臭のような酷い匂いがしたような気がします。(数十年前のことなので記憶違いかもしれません)
あんなものが僅かとはいえ食品に入れられるものだろうか?
これまで家で何回もパンを作ってきましたが、そもそもパンを作るのに臭素酸カリウムなど必要なく、なぜこんなことになっているのだろうか?

..などなどの疑問がわき、事実をもとに調べてみました。

 


毒性


■ JECFA(注1)で結論されたこととして..*1
 ○ 動物実験で遺伝毒性発がん物質である
 ○ 最終食品に残留してはならない
 ○ 小麦粉処理剤としての使用は適当ではない

(注1)JECFA : FAO(国際連合食糧農業機関)とWHO(世界保 健機関)が合同で運営する専門家の会合



■ 国際癌研究機関(IARC)では「グループ2B」(ヒトに対して発がん性があるかもしれない)に分類されている*2




日本および海外での規制


年月 日本 JECFA(国際機関) FDA
(US)
UK EU 南米南部共同市場2 中国 カナダ、ナイジェリア、ブラジル、韓国、ペルー スリランカ
1982 臭素酸として30mg/kg (0.030g/kg)以下、最終製品に残留してはならない*2
1983 臭素酸カリウムの小麦粉処理剤としての暫定許容量を最大で小麦粉1 kgに対して75mg (0.075g/kg) *2
1989 小麦粉処理剤としての許容量は60mg/kg (0.06g/kg)以下にすべきである *2
1990 全面禁止 *2
1992 3月 厚生省(当時)の要請に基づき(社)日本パン工業会が自主規制 *3小麦粉への60 mg/kg以下の使用であっても微量の残留が見られることが 明らかになったため、臭素酸カリウムの小麦粉処理剤としての使用は適当ではないとされ、小麦粉処理剤としての使用の許容量は削除された *2
1993 統一添加物リストから臭素酸カリウムを削除*2
1995 臭素酸カリウムで処理された小麦粉で製造したパン中に残留 臭素酸が検出されたとの報告がなされ、再度、小麦粉処理剤としての臭素酸カリウムの使用は適当でないと結論された *2
1997 殆どが使用禁止 *2
2001 禁止 *4
2002 高感度な分析法によって監視を行うことで、安全性を確保する上では支障がない *2
2003 加盟国が国内での使用禁止 *2
2005 ヤマザキパンが使用再開*4 7月 小麦粉処理剤として小麦粉に使用することを禁止 *2
2007年8月9日現在 臭素酸として30mg/kg (0.030g/kg)以下、最終製品に残留してはならない *2

**臭素酸カリウムとして39mg/kg
小麦粉の全粒粉に75ppm (75mg/kg)未満、漂白粉に50ppm (50mg/kg)未満
不明 禁止*4


**臭素酸 HBrO3 http://ja.wikipedia.org/wiki/臭素酸 モル質量 129
 原子量をそれぞれ、K:39, O:16, Br:80, H:1 として計算すると
 30(mg/kg HBrO3) * 167(KBrO3分子量) / 129(HBrO3分子量) = 39mg/kg(KBrO3)





何故入れるのか?


「小麦粉を原料としたパンの製造時に、生地の伸縮性を増加させ、パンの食感を良くするために使用されることがある食品添加物(小麦粉処理剤)です。」*1


これまで我が家でパンを作ってきた経験と勉強したことを総合すると..
 ・一般的に小麦粉のタンパク質が多いほどよくパン生地が伸びる。
 ・パン生地がよく伸びると、ふんわりと大きなパンができる。
 ・小麦粉の種類によってタンパク質の量が異なる。
 ・臭素酸カリウムは、タンパク質が少ない(伸びが悪い)パン生地を伸ばすことができる。
 ・全粒粉は伸びが悪い。(ふくらみが悪い)

ブログ主がパン作りを始めた頃の失敗作 全然ふんわりできなくてどっしりしたパンでした

 

 





まとめと推測


・臭素酸カリウムは毒性があるので食品添加物に適さない。

・「パンを焼くことで臭素酸カリウムは残らない」とされているが、検査で微量の臭素酸が検出された。

・日本とアメリカではパンへの残留を監視しながら使用している。

・EU諸国、南米、中国、カナダ、ナイジェリア、ブラジル、韓国、ペルー、スリランカなど多くの国では禁止されている。

・日本では臭素酸カリウムを添加していても商品パッケージに表示しなくてもよいので、消費者にわからない。(カリフォルニア州では表示義務化)

・山崎製パンでは臭素酸カリウムを使っている/いたらしい。("ヤマザキパン 臭素酸カリウム"で画像検索したパッケージ商品写真から判断)


国内の一部のパンメーカーで臭素酸カリウムを使うのは、伸びが良くない小麦粉を使っているためではないのかな?
そもそもよく伸びる小麦粉なら必要ないかビタミンCで代用できるのではないかと思うし、実際に臭素酸カリウムを使用しないパン(Pasco敷島製パン*3など)が市場に存在する。

毒性がある物質をモニタリングまでしながら無理に食品に使うことに対して、(社)日本パン工業会と日本政府は寛容であるらしい。


毒性が指摘された物質については、まず排除のための努力をするのが合理的な考えではないでしょうか。





------------------------------ references ----------------------------------

*1 内閣府 食品安全委員会 「臭素酸カリウムのファクトシート(概要)」
  http://www.fsc.go.jp/sonota/kikansi/15gou/15gou_1_8.pdf

*2 内閣府 食品安全委員会 「臭素酸カリウムのファクトシート」
   https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheet-kbro.pdf

*3 Pasco 「臭素酸カリウム」は使用しません 
  http://www.pasconet.co.jp/company/feeling/material02.html

*4 "Potassium bromate" wikipedia
  https://en.m.wikipedia.org/wiki/Potasium_bromate

---------------------------------------------------------------------------------------
nice!(1)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:健康

nice! 1

コメント 6

たけし

そもそも「毒性ゼロ」のものなんてこの世に存在しない。
醤油だって味噌だって、キャベツだってリンゴだって、空気だって水だって、
調べりゃあいろんな毒性が出てくる。
例えば水道水に対する臭素酸カリウム残留基準はパンの残留基準よりも緩い。

>>毒性が指摘された物質については、まず排除のための努力をするのが合理的な考えではないでしょうか。

であれば、極端なことを言えば一切食い物を食うな、息もするな、ってことになってしまう。
「保存するためや色をつけるために毒性のあるものを使うな」ってんなら、そもそも塩漬け保存なんて出来ない(塩にだって毒性はある)、赤飯だって食えない(小豆にだって毒性はある)、梅干だって食えない(シソにも毒性はある)

「全ての物質には毒性がある」ということを認識し、安全性をきちんと調べた上であれば有効利用するほうが合理的だと思うが。
by たけし (2014-12-20 09:46) 

ふじくろ

>>たけしさん

国際機関の発がん性評価は5グループに分かれ、それぞれ対策があります。
「毒性ゼロ」などとはこの記事に記載されておりませんし、あなたの詭弁です。
記事を良くお読みいただき、0か100かの議論ではないことをご理解ください。

あなたの主張は極論であり、その考え方では安全性の確保はできません。
日本でさえもパンに臭素酸カリウムが残留しないことを前提としています。

by ふじくろ (2015-03-12 01:56) 

しゃけ

>>毒性が指摘された物質については、まず排除のための努力をするのが合理的な考えではないでしょうか。
もちろんこれには賛成。ただ排除のための努力するにしてもそれが合理的でないのが今回の物質だったのが皮肉なものですよ。


例としてパンよりも摂取する機会の多い原料の水道水のほうに”検出できる量”が含まれてる時点で非合理的ですよね。
水道水を使って調理した食品(パン)に含まれちゃいけないということになるわけで自分としても違和感がぬぐえないです。
代替品があるじゃないかという意見もありますが、なぜ安全な量(検出限界以下)しか残らないのに使っちゃいけないのかな?
(ここは農薬が悪か?という論争に似てますね。残留農薬がないよう企業努力で製造法を改良してたのに、使用禁止にしろっていわれてるようなものですし)

ようは量を守れば安全というだけです。生産時に使用して多量摂取したら死につながる物質(農薬)なぞ大量にあるのにこれだけを悪者に仕立て上げられた結果ですから

ヤマザキパンは使用をやめちゃいましたから今更ですが…
by しゃけ (2016-02-13 15:05) 

ふじくろ

>>しゃけさん

>ただ排除のための努力するにしてもそれが合理的でない

根拠がありません。

水道水に含まれているからといって、パンから排除しない理由にはなりません。
量を守れば食品にあえて毒を混入させても良いという理由はありません。

>ヤマザキパンは使用をやめちゃいましたから今更ですが…

書き込むのでしたら、根拠を示してください。
(臭素酸カリウムを商品パッケージに表示する義務はないので)現在表示していないことは知っています。

by ふじくろ (2016-05-17 18:31) 

山崎パンバイト経験者

夜間バイトはきつかったのでもうこりごりです^^;

問題の本質は臭素酸カリウムの毒性についてですね。
どの程度の毒性があり、どの程度摂取すると身体に影響が出るのでしょうか?

企業や日本政府のとる態度に対する不満もあるのでしょう。
安全基準を満たした製品を出荷しているかどうか?
他国が禁止しているのに我が国がどうして禁止しないのか?

私自身は「ヒトに対して発がん性があるかもしれない」臭素酸カリウムに対して規制基準を設ける国や基準を守る企業に対して不平不満はありません。
臭素酸カリウムの食品添加による人体への影響について危険性を周知するのであれば毒性の影響をきちんと説明しないと伝わりません。
by 山崎パンバイト経験者 (2016-08-08 01:23) 

ふじくろ

>>山崎パンバイト経験者さん

>どの程度の毒性があり、どの程度摂取すると身体に影響が出るのでしょうか?

それを説明するのが国の仕事です。


>毒性の影響をきちんと説明しないと伝わりません。

それは公的機関の役割です。
by ふじくろ (2016-09-29 13:14) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。