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NHKが偏向報道していたと思う理由ー映画『ザ・コーヴ』 [Human]


2010年7月3日に公開された映画『ザ・コーヴ』が、NHKクローズアップ現代で取り上げられました。
映画「ザ・コーヴ」問われる“表現” クローズアップ現代 2010年 7月 6日(火)放送


これまで映画を3回鑑賞した者の立場から、この番組をとても興味深く拝見しました。
というのも、この映画についての検証が番組内でされていたからです。 



以下は、番組内でどのような検証がされていたかを、録画から一部書き起しました。


[番組後半]
ナレーション(以下”ナ”);映画には『明らかな事実関係の誤りがある』と問題視する人もいます」
ドキュメンタリー映画監督の綿井健陽(わたいたけはる)さん*です。
映像;The CoveのDVDをパソコンに挿入して再生する綿井氏

ナ;その一つが最後の場面です。
字幕:「海外で公開されているオリジナル版」

綿井;えー、ここのところにまあ、英語の字幕でですね、FIREDというのが書いてあるんですよ。つまりこれは彼が辞めさせられたと。
字幕;つまりこれは彼が辞めさせられたと

綿井;水産庁のー、ま、確認してみると
字幕:水産庁に確認してみると

綿井;解雇させられた、あるいは辞めさせられたという…じじつーぅは、無い…
字幕:解雇させられた、あるいは辞めさせられたという事実は無い

ナ;辞めさせられた事になっていたのは、水産庁の諸貫秀樹さん。
映画の中でイルカ漁の正当性を主張する重要な人物です。
映画の制作者は諸貫さんの主張が間違っていると印象づけるために、虚偽の事実を盛り込んだのではないかと綿井さんはみています。

綿井;やはり意図的な虚偽の事実提示…ですねー…としかちょっと思えないんですよねー。
字幕:意図的な虚偽の事実提示としか思えない

綿井;ま、ほんとにもう悪者として陥れて…やろう
…あるいは、あざ笑おうと、あざ笑おうとしてるような姿勢が…
字幕;本当に悪者として陥(おとしい)れてやろうと、あるいはあざ笑おうとしているような

綿井;どうもちょっと感じられるー、んですよね。
字幕:姿勢がどうもちょっと感じられる



この後、水産庁職員諸貫氏への水産庁でのインタビューが続く。
彼は「非常に不快でした。」と述べています。



*綿井健陽 (わたい たけはる、1971年 - 、男性) は、大阪府出身のフリージャーナリスト、映画監督。日本国籍。 ;ウィキペディアより

彼は「キネマ旬報」7月下旬特別号(7月5日発売予定)、月刊創9月号(7月7日発売予定)などで『ザ・コーヴ』について執筆し、またシンポジウムなどで上映支持&イルカ猟擁護の立場で発言されている方です。





[問題の英語字幕]
送信者 blog:地球のために今何ができるだろう?


これに対して『ザ・コーヴ』のルイ・シホヨス監督はブログ(日本語版)でこう述べています。
(翻訳されたものだと思いますが、原文を見つけることはできませんでした。)

「ザ・コーヴ」制作者からのメッセージ  Monday, July 12, 2010 オフィシャルサイト:THE COVE

「映画には水産庁の代表者との面会の場面、そして後にこの職員の上司である中前明氏から、この職員は解雇されたと教えられたことも収められています。現在水産庁はこの職員は解雇されたのではなく、異動になっただけとしていますが、私が聞いたときには解雇としていました。」


具体的には、誰が誰になんと言ったのか?
英語だったのか、日本語だったのか?
通訳などの第3者を介したのか、介さなかったのか?
なぜあのシーンに"FIRED"の字幕付きの映像を使ったのか?
などなど、詳しいいきさつは分かりません。

もちろん事実関係を知る立場にはありませんが「解雇ではなく(部署の)移動だった」と言うのは、たぶん事実なのだと思います。
この番組では、そこにかなりの時間を割いてクローズアップしています。

一視聴者としての感想は、勝手に解雇された事になっている水産庁職員には同情します。
けれども「解雇であろうと無かろうと、この映画の主張には大きく影響しない」と思います。

つまり問題とされているシーンの字幕については、「枝葉末節であり、この映画のポイントはそこではない」と思っています。
日本での劇場公開版では、その問題となった字幕は差し替えられている事からも、
この映画のポイントであるとはたぶん制作側も考えてはいないのでしょう。
重要なポイントとして考えているのなら、表現者として削除できない(しない)と思いますから。

鑑賞して感じた事は、誰が良いとか悪いとかではなく「こんな事実があるんだけど、これってどう?」という制作側の意図です。


番組では他にも、映画の女性ダイバーが泣いているシーンは、再現映像だった可能性がとても高いと紹介しています。
俗にいうヤラセということでしょうね。
番組はここでも「虚偽」をクローズアップしています。


「クローズアップ現代」番組スタッフがこの映画のポイントを「虚偽」にフォーカスしている事が信じられません。

綿井氏が「悪者として陥れて、あざ笑おうとしてる」という感想を持った事は、
彼自身の感想ですから尊重します。
映画を100人が観れば、100通りの感想があって当然なのだと思います。
そう感じる人もいれば、感じない人もいるでしょうから。


一方このNHKの番組を見た人たちは、どのように思われたのでしょうか?
NHKをはじめとするTV局の報道は正しいと、思い込んでいる人も多いと思います。
また「NHKに出演するような映画監督(綿井氏)がそう言うのなら、そうに違いない。」と思われないでしょうか?

綿井氏の話、ナレーション、字幕の3重修飾で強調されています。
冷静に1歩引いて思考できる人はそれほど多くはないかもしれません。
「NHKは正しく、映画製作側=悪、漁師&水産庁=正義」という単純な構図としてとらえられた人のほうが多いことでしょう。

「クローズアップ現代」は多くの視聴者に「この映画にはウソが多く、日本を批判している。」という印象を、刷り込む事に成功したかもしれません。



しかしながら「悪者として陥れて、あざ笑おうとしてる」意図があったかどうかを番組スタッフが検証できていないにもかかわらず、
そう感じた人(綿井氏)の意見だけを紹介して、既成事実であるかのごとく思い込ませてしまうような番組の構成にした事に、報道の危機を感じます。


かりに番組スタッフが”映画に対してあるイメージを視聴者に植え付けよう”と、
意図的な偏向報道をしたとすれば、映画の字幕が間違っていた云々より、 よほど大きな問題だと思います。


番組「クローズアップ現代」は”報道”なのですから、中立が求められてしかるべきと強く思います。

もしマスコミの偏向報道が垂れ流され続ければ、それは私たちの社会にとって大きな害悪であり脅威でもあります。





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コメント 4

keykun

こんばんは。^^
不覚にも、遊び(釣)に夢中で~こちらのブログの存在に気が付きませんでした。^^;;
NHKでも、クローズアップ現代はギリギリの線まで?踏み込んで構成されている良識ある番組だとは思っています。^^;
軸足のブレが目立つのは、余りに大きい圧力が存在する為?だと信じたい・・・と思います。
ちなみにこの番組~視聴していました。^^

by keykun (2010-07-13 21:55) 

ふじくろ

>>keykunさん
こちらのほうまでお越しいただけるとは嬉しいです。
コメントありがとうございました。

「余りに大きい圧力」ですか、なんでしょう?
興味津々です。(^^)
機会がありましたら、こっそりと教えてください。

この国のマスコミの奇妙な傾向を危惧している今日この頃です。


>>matsuchiyoさん
niceありがとうございました。
by ふじくろ (2010-07-14 00:09) 

ドット

本当に。
番組は、まるで『ザ・コーヴ』の監督が意図的に偽情報を映画に入れたかのような編集でしたね。

私は単純に、日本の役人の英語が通じなかっただけではないのか?と
感じましたが、そういう詳しい状況が検証されておらず、不思議に思いました。

だって、『ザ・コーヴ』の監督には、諸貫氏が解雇されたという
偽情報を作るメリットは別にないですよね。
(よほど諸貫氏が個人的に腹立たしい人だったとかであれば別ですが、)
「敵」として描きたい日本政府が、諸貫氏を解雇するなんていう良心を
持っているかのように、わざわざ作り話をする意味がわかりません。

諸貫氏には悪いけど、映画の最後の最後のところであれを見た外国人は
「日本政府やるじゃん!」という印象を持ったと思います。

映画の最後に、撮影の後日談として、日本や太地が変化している話を
入れたかったのだろうとは思いますが、
わざわざ日本の印象をよくする話を作ってまで入れるとは思えないです。
やはり勘違いか、間違った情報で思い込んでいたんじゃないかと
個人的には思います。
by ドット (2010-07-14 04:46) 

ふじくろ

>>ドットさん
>諸貫氏には悪いけど、映画の最後の最後のところであれを見た外国人は
「日本政府やるじゃん!」という印象を持ったと思います。

ここのところ、全く同じ事を思いました。
仮に作品中で(あくまでも創作された物としてという意味で)諸貫氏を悪者に仕立てていたのなら、彼が解雇された事の意味は「日本の官僚組織には自浄機能が作用している」というメッセージになるのでは?と思うのです。
それは変ですよね。
おそらく映画制作者たちは、日本の官僚組織をそれほど高くは評価していないと思います。(憶測ですが)

「あまりに救われない話なので、ラストに観客へのサービス映像を差し込んだ。」や「スポンサーへのサービスメッセージ」などなどいろいろな憶測がありますけど、またそれも映画の楽しみの一つかもしれません。
観客がそうして映画を楽しむのは当然のことですが、NHKが番組で不確かな情報を中途半端に流し、視聴者を混乱させる事には憤りさえ感じます。
by ふじくろ (2010-07-14 22:24) 

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