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イルカと水銀とふるえ [Food]

 
2010年春、イルカを食べる習慣のある漁村での健康調査の結果が発表されました。


送信者 blog:地球のために今何ができるだろう?
 

「太地町における水銀と住民の健康影響に関する調査 平成 21 年度報告書」(PDFファイル)としてまとめられています。

調査団体は国立水俣病総合研究センターです。

この報告書の結論は以下の通りでした。
-----------------抜粋
【結論】 太地町住民の毛髪水銀濃度は、国内 14 地域と比べると顕著に高く、それがクジラやイルカの摂取と関連することが示唆された。しかし、今回の健康調査の範囲内では、メチル水銀中毒の可能性を疑わせる者は認められなかった。
-----------------抜粋終わり

今回クジラ/イルカを食べることと、メチル水銀中毒の関係について明らかにされたことはありませんでした。
現段階ではgood newsだったと思います。

今後も健康調査は続けられるそうです。


この報告書にある健康調査の中から、個人的に2点気になる箇所がありました。



冬季 調査(平成 22 年 2 月 23~25 日)で注目した点;振戦(ふるえ)

------------- 抜粋
水俣病に代表されるメチル水銀中毒に高頻度に認められることがある神経所見のうち、太地町検診受診者で「Mann 試験陽性」、「上肢不随意運動」が対照地区の鹿児島県 K 町住民より 有意に多くみられたが、その他の項目では太地町検診受診者で有意の増加がみられたものはな かった。

.................

また、上肢運動評価では、脊髄小脳変性症患者、パーキンソン病患 者および水俣病発生地区である潟地区住民の所見とは異なり、太地町検診受診者で多くみられ た「上肢不随意運動」(振戦)は病的な振戦である可能性は低いと考えられた。
--------------------抜粋終わり

振戦は”ふるえ”ですね。

つまり、腕が自分の意志に関係なく動いてしまう(ふるえがおこる)人が多かったということですね。
でも、これは病気の時におこるパターンとは違うので「病的ではない」と結論づけていますね。


表 11. 太地町検診受診者と鹿児島県 K 町住民の神経所見の比較より

上肢不随意運動・異常者(太地町)24%
上肢不随意運動・異常者(K町)6%

鹿児島県 K 町;水俣病が発生していない漁村

ふるえなどの異常者がK町の4倍あるが、病的ではないと書いてあります

送信者 blog:地球のために今何ができるだろう?


またこのふるえを詳しく解析した結果が「表 19.太地町検診受診者と潟地区住民、青島地区住民、神経疾患患者の上肢運動機能の比較」で示しているように、

水俣病が発生した地域の潟地区住民のパターンとも違うし
水俣病が発生していない青島地区住民のパターンとも違うし
脊髄小脳変性症患者やパーキンソン病患者のパターンとも違う。

故に太地町住民に多かった”ふるえ”は、病的ではないのだという結論ですね。







もう一つの注目した点:固縮
------------- 抜粋
太地町検診受診者のうち女性で多く みられた「上肢固縮」は、一般にパーキンソン病や脳血管障害などの脳疾患の後遺症にみられる もので、メチル水銀による影響はないと考えられるが、今後の経過観察および精査が必要と考えられた。
--------------------抜粋終わり

固縮(こしゅく、英: rigidity)は、中枢神経障 害時に起こる持続的な筋緊張が亢進した状態のこと。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

表 11. 太地町検診受診者と鹿児島県 K 町住民の神経所見の比較より
上肢固縮・異常者(太地町女性)9%
上肢固縮・異常者(K町女性)1%

送信者 blog:地球のために今何ができるだろう?



つまり神経障害でおこる”固縮”が太地町女性で多くみられたが、これはメチル水銀とは関係ないと書かれています。









また水銀と水俣病を調べている時に、偶然こんな情報を見つけました。

5人の医師・研究者が2002年8月から9月にかけて、カナダのオンタリオ州の水銀汚染先住民族の27年ぶりの追跡調査だそうです。


「カナダ先住民地区における 水銀汚染事件の臨床的追跡調査 」(1975−2002)

-----------------------以下抜粋
■基準以下の頭髪水銀でも長期に継続すれば慢性型水俣病に

頭髪水銀値は安全基準の50ppmを超えてはいない。したがって、安全基準以 下であっても長期に汚染が継続すれば水俣病(慢性型)が発症するということが実証された貴重な症例と考えられた。

■カナダでは1975年代には発症していたと考えられる

■27年前には軽症だったが、現在では典型的な水俣病に
-----------------------抜粋終わり


あるケースでは、
-----------------------以下抜粋
Case 9 :

62歳、male.元漁業。1975年8月には軽い振戦のみで自覚症状もなかった。頭髪水銀値は6.8ppmから18.7ppm。今回、四肢末端に強い感覚障害と起立平衡障害が見られた。軽症水俣病と考えられたが、行政的には否定。
-----------------------抜粋終わり

問題だと思うのは、安全基準以下でも長期に汚染されれば水俣病に発展するという一つの調査結果があるということです。
そしてカナダでも、日本の水俣病問題と同様に十分な救済措置がとられているわけではないそうです。






またLos Angeles Timesでも太地の健康調査の結果を、こんなふうに報じていました。

-----------------------以下抜粋
Tests show residents in dolphin-hunting village in ‘The Cove’ have elevated mercury levels

Los Angeles Times | May 13th, 2010 at 6:43 pm

Joanna Tempowski, a scientist who works on chemical safety at the World Health Organization in Switzerland, said the Minamata institute was a respected institution that was trusted to provide technical assistance. Without seeing the Taiji results, she said that some damage from mercury might not appear immediately.
"At some point in the future they might start to show health effects," she said. 
-----------------------抜粋終わり

スイスの科学者の言葉として、「すぐに影響が出なくても将来的には影響が出てくる可能性がある。」と紹介しています。





いずれにしましても、健康調査は続行されるとのことですので、注意深く見守りたいと思います。





福島大臣の記者会見があったようです。

福島内閣府特命担当大臣記者会見要旨 (平成22年5月11日(火)9:53〜10:08 於:合同庁舎4号館6階605号室)

-----------------------以下抜粋
太地町における水銀と住民の健康影響に関する調査結果が、地元で公表をされました。これについても本日、長 妻厚生労働大臣と話をいたしました。メチル水銀中毒による健康影響は認められなかったが、毛髪水銀濃度は、他の地域と比較して顕著に高かったと。同セン ターの調査結果を踏まえて、食品衛生法を所管する厚生労働省としては、関係の審議会に本件の対応について審議を依頼し、イルカ、鯨の多食地域の住民への注意喚起を行う予定と聞いております。また、実態調査もきちっと行うということを長妻大臣からお聞きをいたしました。
 消費者担当大臣としては、食品の持つリスクなどについて、地元の住民の方を初め消費者の方々に十分に理解してもらうことが重要だと思っておりま す。住民への注意喚起について、厚生労働省とともにしっかり取り組んでまいります。厚生労働省がきちっと実態調査をされ審議会にかけるということですから、消費者庁としては、それをきちっと見守るとともに、今回の結果について、消費者の皆さんへの注意喚起等も、場合によってはしっかり行ってまいります。
-----------------------抜粋終わり









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